「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日
自分の透けた指を見て微笑む少年。
そんなやつが、この世にいるのだろうか?
いや、いたのだ。

わたしの目の前に。


「なんでそんなに呑気なのよ! 透けてるんだよ? この状況が、分かって言ってるの!?」
「分かってるよ」
「じゃあ何なの!? どうにかしようと思わないわけ!? やだ、どんどん透けてく……」


素っ頓狂な声を出し騒ぐわたしに、平然と答える御崎。

透けている部分は完全に消え、御崎の背後の景色が見える。
透ける範囲はどんどん広がっていく。
指から手へ、手から腕へ。

思わずわたしは御崎に駆け寄る。


「だってどうしようもないことだよ。なにかしようとするだけ無駄さ」


だから別にいい。
そう言って、顔の前で手を振ろうと思ったのだろうか。
だけどもう御崎の腕は存在していなくて、わたしに見えるのは肩の動きだった。

それを知った御崎は、少し悲しそうな顔をして、だけどすぐにさっきの笑顔に戻った。
だけどそんな笑顔、もう陽気なんて感じることもできず。
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