「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日
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気付いたら、雨が降っていた。
「……わぁ、ぐしょぐしょだぁ」
濡れて額にぴったりとくっ付いた髪を掻き揚げる。
スカートも足にくっ付いてしまって歩きづらい。
薄手のブラウスは既にびしょ濡れで、もうそこにブラウスがないように感じた。
頼りになるのはひんやりとした濡れたティッシュのような感覚。
それがなければ直接雨に濡れているとおなじこと。
まあ、でも、いいか。
溜め息をつき、また足を動かす。
疲れているはずなのに、足もとても痛いはずなのに、今はなぜかそういうものを感じなかった。
息を吸うたびに痛む喉も、今はあまり気にならなくて。
雨宿りをしようとも思わなかった。
まるで自分が洗い流されているようで――洗浄されているような気がして、気持ちよい。
頬を伝う涙も雨と同化して消えていってしまったし。
熱されたアスファルト独特の匂いも、雨の降る音も、なぜだかわたしを落ち着かせた。