「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日

だけどおばさんは分かっているのだ。
わたしよりも、きっと誰よりも、御崎の死を理解している。せざるを得ない。
それがあまりにも残酷に思えて、わたしは思わず目を逸らしたい衝動に駆られた。


「あのあと雄一は死んでしまったのよ。あなたはきっと運がいいのね」


くすくすとおばさんが笑って、それからぎゅっとわたしの手を握り込んだ。

おばさんの手はとても冷たかった。
唇も紫に染まっているし、どれくらいここにいたのだろうか。

それは一見元気よさそうな行為に思えたが、おばさんの手は可哀想なほどに震えていて。
はっとしておばさんの顔を見ると、おばさんの顔にさっきまでの生気はなかった。


「おばさん……?」
「ごめんね。あなたが悪いわけじゃないのに、涙がとまらない……」


まるで仮面を外してしまったかのように笑顔はぐしゃぐしゃになり、顔は涙で濡れていた。
わたしはそっとおばさんの背中を撫でた。
おばさんは肩を震わせて、むせび泣いていた。

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