「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日

さっきとは違った痛々しい姿。
さっきまで仮面で隠していたおばさんの傷が露になった。
その傷を見て、わたしの心もどんどん傷んでいった。


「いいんです、そんな……」
「ごめんなさい、本当に……でも、あなたを見ていると、どうしても雄一のことを思い出してしまうの」


濡れた瞳が、わたしをとらえる。
その瞳に映るのは、怯えたわたしの顔。


「雄一はまだ若いのに、って。もっともっとやりたいことがあったのに、って。なんで雄一だけこんな目に合わなきゃいけないんだろう……って」


傷付いたところを見て、初めて気付く。

この表情は、わたしが作ったものなんだと。
この人の笑顔を奪ったのは、わたしなんだと。


「……ごめんなさい」
「なんであなたが謝るの。あなたは、何も悪くないのよ」
「いえ……わたしが、悪いんです」
< 88 / 100 >

この作品をシェア

pagetop