「彼」が死んだ日、「世界」が壊れた日
わたしは御崎を救えた。
救うことができた。

だけど。


「悪いのはわたしなんです。わたしが、御崎を守れなかったから……!」


結局、できなかった。


「どういう、こと?」
「守れたんです。救えたんです。わたしなら、できたはずなんです。だけど……できなかった」
「だって、あなたは雄一の死に際にいなかったじゃないの……」


御崎は世界が元になることを望んだ。
だから、この世界では御崎が交通事故に遭い死んだということになっているのだろうか。
それならば、わたしは御崎の死に際にいなかったことになる。

わたしは困惑顔のおばさんに、ええそうですと頷いた。


「わたしはいつも御崎に頼ってばっかりで、だから今度こそ御崎の役に立てると思ったのに……! 御崎は、御崎は……わたしを救った」


わたしが助けるはずだった御崎の命。
だけど御崎はわたしの命を救った。

何の意味もない行為。
わたしにとっても、御崎にとっても。

だけどそれがわたしのためだと御崎は言った。


「御崎は、優しいです……! 優しいから、こんなことに……」


優しくて、ばかで、格好良くて、きざで、正直で。
そんな御崎が好きだった。
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