❀乱世の恋物語❀
戦の始まり
舞「え…っ?戦って何?誰と?戦うの?」

半兵衛「舞、落ち着け」

舞「嫌よ!怖い……」

半兵衛「まだだから落ち着け。明日の予定になってる」

舞「…相手は?」

半兵衛「小田原の北条氏」

舞「全国収めた訳じゃなかったの?」

半兵衛「あえて小田原を残していた。秀吉様に考えがあってのことだ」

舞「明日、大坂城はどうなるの?」

半兵衛「秀吉様と俺は小田原へ行く。他の家臣も多数は小田原に行くが、大坂城に残る家臣も多い。だから…」

舞「安心できん……っ」

半兵衛「舞…?」

舞「言ったじゃない…。いつだって守ってやるって…」

半兵衛「俺は…日ノ本を守りに行くんだよ」

舞「……じゃあね」

半兵衛「舞!!」

舞(意味わかんない……っ。勝手に行っちゃうなんて)

戦国時代だから戦は付き物と思っていても…どうしても、誰にも戦って欲しくない、死んで欲しくないと思ってしまう

翌日

舞(今日か…。小田原征伐)

おみな「お姉さま、入ってもいい?」

舞「おみな…いいよ」

おみな「これ、半兵衛様から預かったの。文(ふみ)だって。これだけだから、じゃあね」

舞「…ありがとう」

包みをそっと開けると文らしきものと髪留めが入っていた

舞「綺麗……」

文は私でも読める丁寧な文字で綴られていた

"舞へ。
昨日は悪かったな。お前はきっと戦に慣れていないからな…。言いすぎた。安心できないけど俺は小田原征伐に向かう。お前がいる限り俺は絶対に死なねぇから。秀吉様と共に大坂城に戻る。それまで信じて待っててくれるか?
竹中半兵衛"

舞(ずるい……。自分だけ言いたいこと言って…)

不意に涙がこぼれた

舞「信じてるに決まってる…。ずっと待ってるから」

舞(私には待つことしか出来ない…っ)

その日の夜

家臣「殿のお戻りだー!!!」

舞(うそ……!)

感情的に廊下に飛び出した

舞「秀吉様、おかえりなさいませ」

秀吉「ただいま。半兵衛は……」

舞「え…?」

戦国時代に来てこんなに廊下を走ったのは初めてだ

舞「半兵衛さんは?!」

家臣「実は、左胸を銃で撃たれたんです…。意識は全くない状態で、別室で安静にしています」

舞「……っ。ありがとう」

その別室の前に立って私はふと思った

舞(あの手紙に書いてあったことは、嘘なの…?)

すると急に襖を開けるのが怖くなった

五郎作「舞様…?」

舞「五郎作さん?どうして…」

五郎作「殿が撃たれたって聞いて、駆け付けたんです。入られないんですか?」

舞「…うん。ちょっとね、入りづらくて」

五郎作「私がお供いたしますよ」

そう言うと五郎作さんはすっと襖に手をかけて開けた

五郎作「殿のご容態は」

医師「かなり危険です。今夜が、山場だと…」

二人「……っ!」

舞「もう、目は覚まさないんですか?」

医師「私もわかりません。では、失礼します」

五郎作「舞様……」

舞「大丈夫よ、別に…」

五郎作「そのようなお顔には見えませんよ」

舞「死んじゃうのかな……。半兵衛さん」

五郎作「…いえ、死なないですよ、死ねないですよ」

舞「え…?」

五郎作「舞様を残して」

舞「………っ」

半兵衛「うぅ……」

舞「半兵衛さんっ!」

五郎作「殿!」

舞(どうしよう…。どうすることもできないの…っ)

五郎作「舞様、こんな時に申し訳ありません。私はそろそろ御殿に戻らねばなりません…」

舞「…うん、遅くまでお疲れ様」

五郎作「失礼します」

五郎作さんもいなくなった今、部屋は静まり返った

舞「ねぇ、半兵衛さん…。そろそろ目を覚ましてよ…」

届かないと分かっていながらも、話しかけてしまう

舞「半兵衛さん……っ。嘘つかないでよね、今さら死なれても困る」

翌日

舞「は…っ!私、あのまま寝ちゃってたんだ…」

そして、私は半兵衛さんの様子を見た

舞(目を覚ます気配、なしか)

舞「早くー、私とお話ししてよー。話したいこと山ほどあるんですけどー」

半兵衛「……うるせぇな」

舞「え…っ?」

一瞬耳を疑ったが、間違いなく半兵衛さんの声だった

舞「半兵衛さん…?生きてるの?」

半兵衛「あれだけうるさくされてたら死ねるに死ねねーよ」

舞「……よかった!!」

半兵衛「舞」

優しく名前を呼ばれドキッとした

半兵衛「心配かけたな」

舞「ほんとよ!」

今は何よりも半兵衛さんと話してることが嬉しい
そして、愛おしかった…
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