❀乱世の恋物語❀
芽生える想い
朝から忙しい日常がまた始まった

半兵衛「舞ー!早く着替えろ!」

舞「女はそんな簡単に着替えられないの!」

半兵衛「あー!もー!入るぞ!」

ぴしゃっと勢いよく襖が開いた
それは私が着物を着替えている途中だった

半兵衛「あ…」

舞「きゃぁぁぁぁ!!!!!」

半兵衛「悪かった!!」

舞「もう二度と部屋に入ってこないで!」

舞(あぁ…。最悪だ…。……ん?なんか、体調悪いかも…)

半兵衛「舞……?ごめんってば」

舞「もういいよ」

そう言った舞の顔は青ざめていた

半兵衛「よかねーよ!そんな真っ青な顔しやがって!」

舞「………」

半兵衛「舞?」

舞「…えっ?なに?」

半兵衛「お前、生きてるか?」

舞「た、たぶん…」

半兵衛「馬出してある、行くぞ」

舞「…うん」

舞(なんだろう…。さっきからめまいがする)

半兵衛「手、出せ」

舞「……ん」

半兵衛「遅めにするか?」

舞「いいよ、飛ばして…」

半兵衛「お、おう」

御殿着

半兵衛「舞、着いたぞ」

舞「………」

舞は真っ青な顔のまま目を瞑っていた

半兵衛「舞!舞!五郎作!」

五郎作「お呼びでしょうか」

半兵衛「舞が、倒れた…」

五郎作「今すぐ運びます。殿は馬からお降りください」

舞「ん……」

半兵衛「舞!死ぬな!」

その日、舞は目を覚ますことはなかった

半兵衛(朝は元気だったはずだ…)

半兵衛「舞……。無理させたな」

そっと舞の頬を撫でた

舞「半兵衛、さん……」

はっとするが、それは寝言だった

半兵衛「…ちっ。なんだよ、このモヤモヤ」

翌日

半兵衛「舞、聞こえるか?」

舞「………」

五郎作「失礼します。舞様のご容態は」

半兵衛「変わんねーよ。まるで眠り姫だ」

五郎作「…実は。舞様は殿が撃たれた時、真っ先に駆け付けて夜中、ずっと看病していたのですよ」

半兵衛「……馬鹿かよ」

微笑んだ目には涙が浮かんでいた

五郎作「殿……」

半兵衛「こいつは…本当に素直でまっすぐな奴なんだよ」

舞「半兵衛さん…」

半兵衛「舞…!」

舞「私、ずっと何してたの…」

半兵衛「寝てたんだよ!ずっと!」

舞「あぁ…。朝からめまいがしてた気がするの」

半兵衛「なぜ言わなかったんだよ!」

舞「半兵衛さんに余計な負担はかけたくないの」

五郎作「仲の良いお二人だ」

二人「やめて(ろ)!!」

五郎作「ははっ」

舞「もう…っ」

半兵衛「俺は出る。舞は休んでろ」

舞「…はい」

五郎作「舞様、今の気持ちはどうですか?」

舞「なんか、モヤモヤします」

五郎作「お二人は本当に似ていらっしゃる」

舞「どこがよ…」

五郎作「気付いてないのですね…」(小声)

舞「なにか言いました?」

五郎作「なにも」

舞「……?」

この時まだ舞と半兵衛は知らなかった
これが恋の始まりだと―…


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