放課後○○倶楽部
『探してもスピーカーなんてありませんよ、伏峰。壁の中からサラウンド効果抜群で聞こえるようになってますからねっ。これでシネーマを見たら大迫力ですわよ、ほほほっ』

 声は俺の名前と律子ちゃんの名前を呼び、しかも俺の行動を見ているような口ぶりである。


 ……シネーマって、イントネーションおかしいよな。


 まあ、声の主はすぐに見当がついてしまったのでどうでもいいが、なんで俺達がこんな目にあっているのかが不思議で仕方なかった。

「副生徒会長、何をしてるんですか? あなたもかなりの暇人のようですね」
『ごほ、ごほっ――私は副生徒会長なんて者ではありませんっ、違います! それから、私は暇人ではありませんっ、これでも社交界とか……社交界に向けて忙しいですっ』

 明らかに動揺して向こう側でむせ返っている副生徒会長。

 お茶でも飲んでいたのだろうか、かなりむせ返っているが大丈夫なんだろうかね? しかも、まだ社交界デビューすらしていないようだな、この人。まあ、ちょっと抜けているところがあるから仕方ないか。

「家に帰りたいんですけど、ここから出してくれませんか?」

 むせ返っている副生徒会長には悪いが、これ以上ここで茶番に付き合っているのも馬鹿馬鹿しいので、単刀直入に切り出したが『ダメです』の一言で片付けられてしまった。

『どうしても出たいですか? どうしても、その豚小屋から出たいですか、下民達よ』
「ええ、家に帰りたいですからね。ところで今は何時ですか?」
『今は九時ですよ。あ、いえ……そうですか。では、今から言う事を実行しなさい』

 声の主が提案してきた事に律子ちゃんは驚き、俺は頭を押さえて項垂れていた。

 
 『この部屋から出るにはパスワードが必要です』


 突然そんな事を言い始めた副生徒会長に嫌な予感を覚え、聞き直したところ――この部屋は田之中グループが管理するマンションの一室らしい。
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