放課後○○倶楽部
「とりあえず、このプレートはもらっておくよ。イカは好きにしていいよ、律子ちゃん」
「分かりました。それじゃ、何か作りますね」

 気持ちの良い返事をしてシンクまで戻っていく律子ちゃんは楽しそうにお尻を振っていた。


 ……完全に今の状況を忘れているようだな、あの娘は。


 でも、お腹が空いては何も出来ないし、血糖値が下がっては思考回路もまともに働かない。ここは栄養補給してリフレッシュするべきだろう。


「律子ちゃん、出来たら教えてね。それまでは探しておくから」
「はあい」

 これまた気持ちの良い返事をして俺に背を向けている律子ちゃん。

 時折「えいっ」やら「せいっ」などと気合の入った声が聞こえているが、イカと格闘でもしているのだろうか?

 何だかイカがかわいそうというか、かなり分が悪そうな気がするが、俺は俺の仕事をしますかね。

 ……。
 ……。

「先輩、出来ましたよーっ」
「ん? ああ、分かった」

 観葉植物を調べていたところに律子ちゃんの声が響き、捜索は一時中断された。鼻腔をくすぐっていくいい匂いに誘われて俺はうしろを振り返って固まっていた。


 ……ジーザス。


 思わず無神論者でも神にすがりたくなる光景が広がっていたのには驚いた。

「律子ちゃん…………これは一体?」
「イカの姿焼きです。味付けは醤油と隠し味が少々のシンプルなものですけど、おいしく出来てると思いますよ」

 自信満々に胸を逸らし、和音さんに負けず劣らずの膨らみをプルンと揺らす律子ちゃん。和音さんのそばにいるから目立たないが、大きさは学園内でもかなり上位に入りそうなものである。

 いや、今はそんなアダルティな情報は置いといて、このナイスな腰つきで踊るイカは何だろうか? まあ、イカに腰があるのかは疑問なのだけど。
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