放課後○○倶楽部
 しかし、俺の考えを打ち砕くように引き出しの中にあったのはまったく予想とは違うものだった。

 小学校の教科書が数冊と『鈴木』と名前が入った女子の体操服(しかも上下セット)……小学校時代にタイムスリップしたような机だな、これ。

 そう言えば、小学校時代にはほぼ必ずといってどのクラスにも机の中に給食のパンを入れたままにしてカビが生えていたヤツがいたな。それを笑っていたヤツも実は同じ事をしていたって罠もあったけど。

「しかし、これは使い道が――」

 一番下の引き出しを閉めようとして手を掛けたところで、奥の方からコロコロと黒いものが転がってきた。


 ……炭?


 それは五センチほどの大きさをした炭で、一つではなくて全部で四つ奥から転がってきた。この引き出しには体操服が入っていたから、もしかしたら湿気取りのためだろうか? しかし、この部屋にあるのは何とも不思議なものばかりだ。

 でも、この炭を鉛筆代わりにしてノートを擦れば何が書いてあったか分かるかも知れない。

 炭を掴んでノートの上を軽く擦っていくと、炭で黒くなった部分と白く残った部分がハッキリと分かるようになってきた。

「…………はあ」

 だが、そのノートに書かれていたのは『ご苦労様。頑張って擦ったけど、これはハズレだよ』の文字だけだった。

 変なところに手が込んでいるというか、馬鹿にしているというか、ここを出たら副生徒会長に仕返しをしないと気が済まない。そう思って炭を置こうとしたが、ノートにはまだ何か書かれている跡が残っていた。

 『ここまで見つけたあなたの執念はすごい。その頑張りと執念に敬意を払ってパスワードを教えましょう。ただし、あなたに少しでもプライドがあれば、このまま見ない事を忠告しておきます』

 更に炭を擦って出てきた文章には最早何も言う気力がなく、握り潰してしまい衝動に駆られた。


 ……かなり挑発的だな。


 『プライドがあれば』ってところが何とも挑発的で、和音さん辺りには一番効果的な言葉だな。ただ、もし和音さんのところに同じ仕掛けがあっても気付かない可能性の方が高いので、これも無駄に終わるだろうけど。
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