俺様外科医に求婚されました
「811号室完了です」
スタッフステーションに戻った私は先輩の倉田さんに声をかけると、業務表のチェック欄に記入をしていた。
「ねぇねぇ、昨日の王子とはあれからどうなったの?」
すると倉田さんは私の元に寄ってきて、ひそひそ声でそう聞いた。
「王子…?」
「ふふっ、何しらばっくれてんの。昨日モッチーを連れ去った、お・う・じ!隠さないで話してよ」
ニヤリと笑みを浮かべる倉田さん。
そういうことかと気付いた私は慌てて口を開く。
「隠すも何も、真っ直ぐ帰ったので。何もないですよ」
「またまた〜」
「本当ですって」
「えーっ。本当に?あんな風に連れ出されたのに?」
「はい…」
「はぁっ、なら私が連れ出されたかったわ」
倉田さんはそう言うとわざとらしく頰を膨らませた。
言いたいことはわかる。
この後に続く言葉も、だいたい想像が出来た。
そしてその予想は、やはり裏切らなかった。
「いや、名波さんも佐倉さんもすごくカッコよかったわよ?輪島部長だって結婚さえしてなかったらストライクゾーンだし。でも、あの彼はSクラスだったじゃない」
…ほらきた。