俺様外科医に求婚されました



すると大和先生は、涼しい顔で口を開いた。



「何で恥ずかしくならなきゃいけないんだ」

「えっ…いや、だから…」

「俺は、自分の気持ちに正直に生きていたいだけだ。思ったことは隠したり誤魔化したりせず、ちゃんと口にする。だから、自分の言葉に恥ずかしさなんて微塵も感じてない」


力強い真面目な声のトーンとその言葉に、私は思わず息を飲んだ。

普段はふざけてばかりのくせに、その瞳は真っ直ぐに私を見つめている。

でも、次の瞬間。


「って、ごめん。いきなり真面目モードかよって感じだよな」


苦笑いを浮かべた大和先生は、ぼそっとつぶやくとハンドルを握り車を発進させた。


「家はどのあたり?」

「あ…足立区です。最寄り駅は梅島っていう駅なんですけどわかりますか?」

「んー、なんとなくは。まぁナビがあるし大丈夫だろ」

「そうですよね」


そう答えると、私は窓の向こうに目を向けた。

行き交う車や歩道を歩く人。
それを流し見ていると、日付けが変わっても東京の夜は明るいなぁなんて。

見慣れた街並みなのに、そんなことをふと思った。


「今日は疲れただろ。梅島だっけ?そのあたりに着いたら起こしてやるし、寝てていいぞ?」

「いえ、大丈夫です。大和先生こそ、今日は大変だったんじゃないですか?頭部の怪我で運ばれてきた患者さん、五人くらいいましたよね」


そう言いながら、私は運転席の方に視線を向けた。

すると、大和先生は前を向いたまま。


「あぁ。一人は……助けられなかったけどな」


今にも消えてしまいそうな声で、つぶやくようにそう言った。

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