俺様外科医に求婚されました
そっと鍵を開けて家に入ると、真っ暗だった玄関がパッと明るくなった。
センサーが反応すると自動で電気がつくのは便利だけれど、深夜の帰宅となると話は別だ。
音を立てぬよう靴を脱いで端に揃えると、二階へ繋がる階段を忍び足で登っていく。
だけど静まり返った空気の中、ガチャと後ろで音が鳴った。
「理香子ちゃん、今帰ってきたの?」
その声に、慌てて振り向く。
「はい…すみません、今日は色々あって残業だったんです」
「そう、誰かに送ってもらったの?家の前に車が止まってたようだけど」
「あ…終電に間に合わなかったので職場の上司が送ってくれて」
「上司?外を覗いたら良い車が止まってたから窓越しに見てたんだけど」
そう言われ、思わず息が止まりそうになった。
もしかして、見られてた?
「悪く捉えないでちょうだいね、こんなことは言いたくないんだけど…今はあんなことしてる場合じゃないんじゃないかしら」
あんなことって。
やっぱり…さっきの現場を見られていたに違いない。
「今日もお母さん大変だったのよ?小春(こはる)のカバンから財布を勝手に取ってたみたいで。あれだけ強く言ったのに、またアレをたくさん買ってきたの」
聞きながら、胸の中にズキン…と不快な音が響いた。
「すみません。お金、いくら使ってたんですか?」
私はそう言いながら、カバンから財布を取り出した。