俺様外科医に求婚されました



「600円程度だったし私から小春には返しておいたから、それは別にいいのよ」

「いや、そうわけには」


そう言いながら、慌てて財布を開いた。

だけどそんな私を見ることもなく、伯母さんは言う。


「でも、そろそろ本当に先のことを考えてもらわないと。これから先。もっと大変になるでしょう?理香子ちゃんも仕事が大変だとは思うけど、四六時中一緒にいる私の方も大変よ」


伯母さんはそう言うと、開いた財布に目もくれず。


「おやすみなさい」


それだけ言うと、さっさと部屋に戻っていった。

静寂に包まれていく空気の中、いろんな思いを抱えながらも私は再び階段を登っていった。

そして二階に上がると、廊下の一番奥の部屋まで進んで。

音を立てないように、そっと部屋のドアを開けた。


聞こえてくる寝息と、薄っすらと見えてくる母の寝顔。

それを見ながら、私は小さく息をつく。


敷かれた布団のすぐ横には、白いポリ袋が見えた。

two-pieceという文字が印刷されたその袋は、この家から一番近いスーパーの袋だった。


その袋を見ながら、私はまた思う。

どうして母は、こんなことをするのだろうと。


< 154 / 250 >

この作品をシェア

pagetop