俺様外科医に求婚されました
「600円程度だったし私から小春には返しておいたから、それは別にいいのよ」
「いや、そうわけには」
そう言いながら、慌てて財布を開いた。
だけどそんな私を見ることもなく、伯母さんは言う。
「でも、そろそろ本当に先のことを考えてもらわないと。これから先。もっと大変になるでしょう?理香子ちゃんも仕事が大変だとは思うけど、四六時中一緒にいる私の方も大変よ」
伯母さんはそう言うと、開いた財布に目もくれず。
「おやすみなさい」
それだけ言うと、さっさと部屋に戻っていった。
静寂に包まれていく空気の中、いろんな思いを抱えながらも私は再び階段を登っていった。
そして二階に上がると、廊下の一番奥の部屋まで進んで。
音を立てないように、そっと部屋のドアを開けた。
聞こえてくる寝息と、薄っすらと見えてくる母の寝顔。
それを見ながら、私は小さく息をつく。
敷かれた布団のすぐ横には、白いポリ袋が見えた。
two-pieceという文字が印刷されたその袋は、この家から一番近いスーパーの袋だった。
その袋を見ながら、私はまた思う。
どうして母は、こんなことをするのだろうと。