俺様外科医に求婚されました



その日は一日中、気分が晴れないままだった。

仕事はそれなりに忙しくて仕事は淡々とこなしていたけれど。

何をしていても頭に浮かぶのは母のことで、ボーッとしてしまっていることが多かった。


「どうしたの?今日なんか変じゃない?」


そんな様子に異変を感じたのか、勤務時間がもうすぐ終わりかけの頃に小野さんにそう声をかけられた。


「…そうかな?いつもと同じだよ」


母のことはプライベートでデリケートなことだ。
話しても気を使わせるだけだと思った私は、笑顔を作る。


「本当に?諒太先生と付き合い始めたわりには今日ずっと浮かない顔してるから」


ん?
付き合い…始めた!?


「えっ、どうしてそれを」

「どうしてって、諒太先生が堂々と交際宣言したらしいけど。聞いてない?」


首をブンブン左右に振り、小野さんを見つめる。


「えっ?付き合い始めたんじゃないの?」

「や…それはそうなんだけど…交際宣言って、いつどこでそんなこと言ったんだろ」

「昨日の夜勤中らしいよ。もうだいたい知れ渡ってるんじゃない?」


昨日の夜勤中!?ってことは、あれからすぐ喋っちゃったってこと!?


「先輩達は普通だった?誰かに何か言われたりしなかった?」


こくんと頷き、小さく息をつく。

今日は周りに目を向けている余裕なんてなかった。
目の前の仕事をこなしていくだけで精一杯で。
周囲の目も、ちゃんと見たような記憶がない。

それに、夜通し勤務を続けていた諒太は午前中で勤務を終えて帰宅していたから。まさかそんなことがあったなんて思いもしなかった。


「そっか。でもでも!本当望月さんが羨ましい。堂々と交際宣言なんてカッコ良すぎでしょ」


…いや、逆にそれ困るんだけどな。
諒太のファンは院内にたくさんいるし、むしろひっそりと付き合っていたいくらいなのに。


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