俺様外科医に求婚されました
「えっと、中野区新井」
「相沢と、離婚したのか」
住所を言いかけた私の声を遮るように、諒太の声が重なる。
車内がまた、静かな空気に包まれていった。
「何で黙ってる。いちいちそんなこと聞かれたくないか?」
「……はい」
窓の向こうに目を向けながら、私は諒太に素っ気なくそう答えた。
「そうか。でも、俺には」
諒太はいきなり腕を掴んできたかと思ったら、その腕をグッと引き寄せて。
うつむいていた私の顎を指先で掴むと、自分の方へ顔を向けさせた。
「俺には、それを聞く権利がある」
そして、真っ直ぐに私の目を見てそう言った。
久しぶりに、諒太の顔を真近で見た。
あの頃とは変わっていないようで、変わっているような気もする。
少し、男らしくなったのかな。
色気のある、大人の男性になった。
綺麗な顔は相変わらず綺麗で。
私を見る瞳は、真っ直ぐで。
胸の奥が、ドキン…と音を立てる。
…負けちゃダメだ。