俺様外科医に求婚されました
鼓動がどんどん速くなっていく。
心臓の音が、諒太に聞こえてしまうんじゃないかと思うほど体中に響いていた。
「なぁ理香子」
「は…はい」
「今日さ」
「…はい」
「本当いきなりで申し訳ないんだけど」
諒太はそう言うと、スッと体を起こして。
隣で背筋を正すように姿勢を整えると、やけに真面目な顔で口を開いた。
「理香子を紹介したいんだ」
「私…を紹介?って、誰にですか?」
「親に。紹介させてほしい」
……はっ⁉︎親⁉︎
親って理事長と院長ってこと?
しかも、今日いきなり⁉︎
「実は、理香子にはまだ話せてなかったんだけど」
「はい…」
「親同士の勝手な縁談話で、医大の教授の一人娘と無理矢理婚約させられそうになってる」
それは…すでに相沢先生から聞いてますけど。
「でも俺は、理香子と付き合い始めた。もちろん結婚を前提にだ。だから理香子を婚約者としてちゃんと紹介したい。そうしなきゃ、勝手に縁談話を進められてしまう」
「そ、そんなに…急がなきゃいけない状態なんですか?」
「あぁ。来月には両家の顔合わせと結納の儀をするとかなんとかって先週言われたばかりなんだ。何度も無理だと伝えたけど、俺一人ではどうにもならなくて。だから…」
諒太はそう言うと私の目をジッと見つめて。
「真剣に交際してる婚約者として紹介させてほしい。一時に帝国ホテルで場所はセッティング済みだ」
と、まさかの時間と場所までもを口にした。
「あの…それはつまり…もう行くことは決まっちゃってるってことですよね」
「あぁ」
「しかも、一時って…すぐじゃないですか」
「…ダメかな?」
「や、ダメかな?って。もう決まってるなら…行くしか…ないんじゃないですか」
行かなければ、約束をすっぽかすような人間だと思われる。
それに…このまま婚約の話が進められたら、諒太はその医大の教授の一人娘の方と…本当に婚約することになるのかもしれない。
そう思うと、いきなり過ぎて困ったけれど、これは行くしかないのだと腹をくくった。
何故なら私は、諒太とその人との縁談話が進んでしまうのは、嫌だと思ったからだ。