俺様外科医に求婚されました
「いいのか?本当に」
その言葉に頷くと、諒太は目の前で嬉しそうに笑った。
「良かった。断られたらどうしようかと思ってたんだ」
本当にホッとしたような顔。それを見て、私も少しホッとした。
不思議だなぁと思う。
出会った頃は、見た目のカッコ良さと医者という職業を武器にする、軽くてウソっぽくて苦手な人だと思っていたのに。
仕事中の真面目な姿や、私を思ってついてくれていた優しいウソ。
ふざけていたようでも、真っ直ぐに私を見てくれていた誠実なところ。
そんないろんな一面を知っていくごとに、いつからか心は変化していて。
無邪気にニッと笑う顔も。
時々子供みたいに可愛いくなるところも。
こっちが恥ずかしくなるくらいの甘いセリフを、涼しい顔でサラッと言いのけてしまうところも。
今は…好きだなって。
こういう状況になって、初めて気付かされた。
母の病気がわかってからは、ずっと心の中がどんよりと曇りがかっていた。
毎日が不安でしょうがなかった。
この先どうなるんだろうと考えたら、眠れない夜も多かった。
でも、諒太と出会ってからはそんな日々も少しずつ変わった。
光が射し込んだ。
いつもくだらないことばかり言うし。
すぐにふざけて甘いセリフを吐くし。
バカだなぁって笑ってしまうことも多い。
だけどいつからか、そんな“普通に”笑えるような瞬間が私には救いのようになっていて。
落ち着けて、安心出来る。
唯一居心地の良い場所になっていた。
だから…そんな諒太が、誰かのものになってしまうのは嫌だと思ったんだ。