俺様外科医に求婚されました
「はぁっ。意味深な感じで言うから、一瞬だけちょっと妬いたじゃん」
「…すみません。いつもふざけた感じでくるから、ちょっとだけ真似してみました」
そう言って笑いながらも、どう切り出そうかと考えていた。
悩んでいた。母のことはちゃんと話さなきゃいけないことはわかっていたし。
どう伝えればいいのかを迷っていた。
「ははっ、何の真似だよ。つーか、理香子はいつも俺がふざけてると思ってんの?」
「んー、だって…甘すぎる言葉でもしれっと言っちゃうし」
「甘すぎる?」
「…はい。言われたこっちが恥ずかしくなるようなセリフ。いつも言ったりするじゃないですか」
私がそう言うと、諒太は不思議そうに首を傾げる。
「別に甘いセリフを吐いてるつもりはないけど。理香子のあらゆることの、最後の男になりたいとは…いつも思ってる」
そして相変わらず恥ずかしくなるような言葉をサラッと口にした。
「出来れば最初も俺で、最後も俺がいいけど」
「えっ?」
「例えばこの葛西臨海公園だってそうだ。初めて来た相手が俺だったことは嬉しいし、最後も俺ならもっと嬉しい。観覧車とか、手を繋いで歩くとか。デートだってキスだって。理香子の最初の相手にはなれなかったかもしれないけど。最後は俺だったらそれでいいなって思うよ」
言ってて恥ずかしくはならないのだろうか。
聞いてるこっちは…恥ずかしくてしょうがない。
だけど、ストレートな言葉をくれるこういう真っ直ぐなところに…私はいつからか惹かれてしまっていたのかもしれない。
「だからこれからは、俺以外の男とは観覧車は禁止。触れるのも絶対禁止。もし変な男が近寄ってきたら、絶対俺に言うこと。わかった?」
「…はい、わかりました」
渋々頷いたフリをしてみせた。
でも心はもう、完全に奪われている。
だって、どこからどう見たってカッコイイのに。
私みたいな女を相手にこんなに可愛いこと言ってくるから。
「じゃあ…諒太も。私以外の女の人とは観覧車には乗らないでください。触れるのも禁止。わかった?」
なんて。私もそんな言葉を口走ってしまっていた。