俺様外科医に求婚されました
「権利?そんなもの、あなたにありません」
私は目をそらさず、諒太にそう言った。
諒太は悲しい顔で、私から目をそらした。
胸がぎゅっと痛むのは、諒太にこんな顔をさせてしまったからだろうか。
「…送るよ」
ナビに住所を登録すると、諒太は黙ったまま車を走らせた。
移り変わる景色を横目に、頭の中ではいろんな思いが駆け巡った。
同じ病院で働いていた頃のこと。
最初は軽そうで気にくわなくて、どちらかといえば苦手なタイプだった。
言うことがチャラくて、冗談なのか本気なのか、その境が読めなくて。
グイグイ迫られる度、冷たい態度をとることで私は自分を守っていた。
だけど、医師である時の諒太は別人のように凛々しくて。
手術室に入る時のキリッとした瞳は、息を飲むほどにかっこよかった。
若くして「天才脳外科医」なんて呼ばれていた彼。諒太は、常に周囲から注目の的だった。