俺様外科医に求婚されました



「もしかして、緊張してる?」

「そりゃあ…まぁ。しない方がおかしいと思います」

「だよな。さっきから理香子、ずっと顔が強張ってるもん」


午後0時45分。
私は帝国ホテルの地下一階にある、日本料理店、山崎にいた。

料亭山崎は、私みたいな一般ピープルでも名前だけは知っていたくらいの有名なお店で、ミシュランガイドにも載っているような、名の知れた高級料亭だった。

そんな有名店のこの店に、諒太は慣れた様子で足を踏み入れたけれど。
フロア内を丁寧に誘導され、奥まった場所にある隠れ家のようなこんな個室に案内されてしまったら、初めての人間なら緊張しない方がおかしいと思う。

正座する姿勢も、自然と背筋が伸びて真っ直ぐになっていた。


「あの、ここってよく来るんですか?」

「んー、入学とか卒業とか?節目節目の祝い事なんかは、だいたいここだったかな」

「…そうなんですか」

「俺はあんまり、堅苦しい雰囲気が好きじゃないんだけど。ここの料理長と親父が親しくて、何かある時はここって感じでさ。だから今日もここを使わせてもらうことにしたんだ」


諒太のその言葉に頷きながらも、雰囲気に落ち着かない私は個室の中を見渡す。


そして、室内の一角に飾られている華やかな生け花に目が止まった…その時だった。


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