俺様外科医に求婚されました



主導権は、完全に理事長が握っている。
どうしてなのかはわからない。
でも院長は、理事長に頭が上がらない。
何故か、そんな風に見えた。


「聞いたでしょう?親に反対されるような交際を貫くなんてただの親不孝よ。あなたは一度だけじゃなく、二度も親不孝するつもり?」


理事長がそう言うと、隣に座っていた諒太の拳がぎゅっと握られたように見えた。

親不孝。一度だけじゃなく二度もって。
それはきっと…お兄さんのことを言っているのだ。

胸の奥が、ざわざわと蠢く。

違う。そうじゃない。
諒太は、親不孝なんてしていない。


「あのっ」


気付けば私は声を上げていた。

この状況で、これ以上理事長の機嫌を損ねるような真似はしたくない。

でもこれだけは諒太のために、ちゃんと言っておきたかった。


「諒太さんは、一度も親不孝なんて…してないと思います」

「あなたは諒太の何を知ってるの?何も知らないくせに偉そうなこと言わないでちょうだい。この子のせいで長男の」

「知っています。お兄さんのことは、諒太さんから聞きました」

「だっ…だったらわかるでしょう!」


怒りに満ちた顔で理事長は私を睨みつける。
だけど私はその目に怯まずに続けた。


「わかりません。だって、お兄さんは事故でお亡くなりになられたんですよね?それは諒太さんには何の責任もないはずです」

「何の責任もない?どうして?諒太がサッカーなんてバカみたいなことしていたから祥太は」


違う。そうじゃない。
何で…どうしてわからないの?

確かにお兄さんの死は理事長や院長にとって辛いものだったとは思う。
何の前触れもなく、唐突で、残酷で、悲しいことだったと理解できる。

でもそれは、諒太だって同じなのに。

どうしてそれが、この人にはわからないんだろう。


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