俺様外科医に求婚されました



「お母様にはバカみたいなことだったのかもしれません。でも、諒太さんはそのサッカーが好きで、一生懸命やっていて」

「黙りなさい!」


キーンと耳をつんざくような声が部屋中に響く。

心臓がバクバクする。理事長に楯突くなんて…私はとんでもないことをしているのかもしれない。
でも、どうしても我慢が出来なかった。


「だからお兄さんは…サッカーを頑張ってる弟のために、試合に足を運ぼうとしてくれてたんじゃないんですか?」

「何をわかったようなこと…」

「家族の中で唯一、お兄さんだけは諒太さんの好きなサッカーを理解して、応援してくれてたんです。それなのに、自分が事故で死んでしまったことをその弟の責任にするなんて…お兄さんは絶対、そんなこと望んでなかったと思います」


会ったこともない人だけど。
諒太のことをちゃんと見ていてくれた人。
諒太の好きなことを認めて、応援しようとしてくれてた人。

そんな人が、諒太のせいでとか、試合を見に行こうとしなければとか。
そんなこと、死んだ後でも思うはずがない。


「…そうだね」


えっ?
聞こえてきた院長の声に、私はハッとして目を向けた。

目が合った院長は、私を見て小さく頷く。


「誰も悪くない。諒太が悪いわけでも、サッカーが悪かったわけでもない。もう、やめないか…多恵」

「何を言ってるの?私が祥太に病院を継がせるために幼い頃からどれだけの労力をかけていたか、あなたにはわからないでしょう!」

「わかってるよ…」

「わかってないわ!あなたはこの子が、あの女と重なるから…だから庇ってるだけでしょう?同じ、看護助手ですものね!」


吐き捨てるようにそう言った理事長は、テーブルをバンッと叩いて立ち上がると、そのまま部屋から出て行ってしまった。


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