俺様外科医に求婚されました
「ここ?」
諒太の声で、ぼーっとしていた頭が一瞬で覚めた。
車が、ゆっくりと停車する。
外を確認すると、私が住んでいる二階建てのアパートの前だった。
私はシートベルトを外すと、運転席の方に目を向けた。
すると諒太は後部座席に手を伸ばし、器用にバッグを取ってくれた。
「…ありがとう、ございます」
自分のバッグを取り返しただけなのにお礼を言うなんて釈然としないけれど。
一応、送ってもらったわけだから…お礼はちゃんと言っておいた。
「じゃあ、失礼します」
助手席のドアに手をかけ最後にそう口にすると、私はそっとドアを開けた。
…だけど次の瞬間。
「…っ⁉︎」
一体何が起きたのか。
「ちょっ、何なんですか⁉︎」
私は彼の…諒太の腕の中にいた。
「ちょっと!離してください!」
「うるさい、暴れんなって」
「暴れるな?だったら離してください!」
「1分でいい。いや、10秒」
耳元で、声が響く。
「10秒でいいから…」
諒太の掠れた声が、そう響いた。