俺様外科医に求婚されました
それからすぐに、院長は個室をあとにした。
再び静まり返った空間が、私達二人を包んでいく…と思ったのは、つかの間のこと。
「あぁー、腹減った」
今までの空気をカラッと変えるような諒太の声が、沈んだ空気を明るく壊していく。
「理香子も腹減っただろ?」
「えっ…私は…お腹すくとかそれどころじゃないっていうか。普通、こんな状況でお腹すいたとか言います?」
「んー、言います」
「…はぁっ。もう、なんなんですか…」
いつものノリに呆れる半面、どこかホッとしている自分もいる。
諒太が諒太らしくて、ホッとする。
「なぁ、理香子」
「次は何を言い出すんですか?あ、わかった喉が乾いたとか言い」
「…ありがとな」
「えっ…?何がですか」
また絶対ふざけるのかと思ったのに。
いきなりありがとうなんて言うから…ホッとしたりキュッとなったり。心が動いて落ち着かない。
「何が…って、言葉ではうまく伝えられないけど」
諒太の手が、私の手にそっと重なる。
「理香子の言葉ひとつひとつが嬉しかった」
そしてそう言うと、握られた手をいきなりグッと引かれ、私はあっという間に諒太の腕の中にいた。