俺様外科医に求婚されました
嬉しいのは、私だって同じだ。
出身大学とか、母が何をしている人だとか、諒太はそんなの関係ないと言ってくれた。
だから私も、そんな諒太の言葉を信じて。
ちゃんと話そうと思う。
「諒太」
「ん?」
「私の、お母さんのことなんだけどね」
ふぅ、と息を吐き、心を落ち着かせる。
「実は…」
「俺は、理香子の親が何の仕事をしてる人でも関係ないって言っただろ」
「うん…」
「お父さんがもう亡くなってたなんてことは知らなかったけど、近いうち理香子のお母さんにも会って、きちんと挨拶もしたいと思ってるし」
「……挨拶」
胸の奥が、ぎゅうっと締め付けられる。
母は、わかるのだろうか。
諒太に会って、私たちの交際を報告したら、どんな顔で、何と言うんだろう。
「理香子に似てるの?」
「えっ…」
「理香子を女手一つで育ててきた人だから、理香子以上にしっかりした人なんだろうな」
しっかり…した人。
諒太には、どんな母親像が浮んでいるんだろう。
会ったら、驚かせてしまうだろうか。
「楽しみだよ、会える日が」
本当に、その日を待ちわびているような諒太の声。
言えなかった。
言い出せなかった。
私は臆病で、弱虫だ。
「…うん」
母のことを隠したまま、病気のことを伝えることが出来なかった。