俺様外科医に求婚されました
「じゃあ、一歩前進ってことだ!良かったじゃん!」
「うん…まぁ、小さな一歩だけどね」
院長達との初対面から一週間後。
久しぶりにお昼休憩のタイミングが重なった私と小野さんは、二人で院内の食堂にいた。
周囲に人がいたこともあり、事細かな詳細は話せなかったけれど、葛西臨海公園に行ったことや院長と理事長に会えたこと、交際している報告は出来たと話すと、小野さんは自分のことのように喜んでくれた。
「あーっ、いいなー。私も相沢先生とデートしたーい」
そして相変わらずの憧れである相沢先生の名前を口にする。
「誘ってみたらいいのに」
「うーん、そこはやっぱり女としては誘われたいじゃん?」
結構アピールは出来てる方だと思うのに、相沢先生はなかなか釣れないらしく、手こずっているのだと小野さんは言う。
「いいよなぁ望月さんは。トントン拍子にいっちゃってさー」
「そんなことないよ?」
「そんなことあるある」
ぷっと頰を膨らませた小野さんは私を見つめ、わざとらしく怒った顔をする。
けれどその顔は、ほんの数秒で崩れすぐに笑顔がこぼれた。
「私も観覧車乗りたいよー」
「ふふっ、それをそのまんま相沢先生に言えばいいのに。今の乗りたいよーって言った小野さん、すっごい可愛いかったよ?」
「え、うそ!?どんな顔だった!?望月さん鏡持ってる?」
「持ってない」
「えーっ!?」
天真爛漫でコロコロ変わる表情は、感情のままに変化していてずっと見ていても、何故か飽きない。
看護師と看護助手という立場の壁を感じさせない小野さんは、職場では一番身近な存在であり、唯一気を使わずに話が出来る相手だった。