俺様外科医に求婚されました
「ねぇ、お母さん」
目を覚ましたら、何を話そうか。
今日の空は雲ひとつないね、とか。
春になって暖かくなったら、一緒に桜を見に行こうねとか。
何でもいい。
何でもいいから、普通になにか話をしたい。
病気のことは忘れて、お母さんと何気ない話をしたい。
それで、一緒に笑いたい。
お母さんの笑顔を、たくさん見たい。
仕事もあったし、最近は諒太と過ごす時間も増えていた。
ゆっくりこうして寝顔を見る時間も、減っていたような気がする。
私が側で支えてあげなきゃいけないのに。
きっと、寂しかったんだよね。
私のことが一瞬でもわからなくなっちゃったのは、そもそも私のせいだったのかもしれないね。
「ごめんね…」
眠る母を見ながらいろんなことを考えていると、時間だけが静かに過ぎていった。
だけどそんな二人きりの時間は…
コンコン、と突然ドアをノックされた音と、その直後に現れた三人の来訪者によって、無情にも止まってしまった。