俺様外科医に求婚されました



「新薬の臨床試験なんて願っても無いチャンスじゃない。今ならまだ理香子ちゃんのこともわかってるし、ここで進行を止められれば今以上にひどくはならないのよ?」


伯母さんのその言葉に、揺れていたはずの心が、ゆっくりと止まっていく。

臨床試験への参加と諒太との関係を天秤にかけるなんて、あまりにも理不尽だ。

だけど私はもう、迷いを捨てることにした。


「…わかりました」

「わかったとは?」

「諒太さんとは別れます。だから、母を臨床試験に参加させてください」


そしてハッキリとそう口にして…理事長に向かって頭を下げた。


「そう。わかったわ、顔を上げなさい」


そう言われ、深々と下げていた頭をゆっくりと上げる。
すると目が合った理事長は、私を見て薄っすらと笑みを浮かべた。


「手切れ金は、200万でどうかしら。金額が決まればすぐに契約が交わせるように西野に契約書は作らせてあるの」


契約書?どうしてそんなものを?


「200万なんて大金じゃない、十分よね?理香子ちゃん」


十分?伯母さんのその言葉に、たまらない苛立ちがこみ上げてきた。
何が大金なの?何が200万?諒太と別れることで、どうしてお金を受け取らなきゃいけないの?


「お金なんて結構です」

「何言ってるの理香子ちゃん」

「これは、私と理事長の話です。伯母さんには関係ないでしょう!?」


強い口調でそう言い放つと、伯母さんは血相を変え私に言い返してきた。


「関係ないのね?だったらもう、うちからは出て行ってちょうだい。関係のないあなた達親子の世話をする義務は、うちにはないわ」

「…わかりました、すぐに荷物をまとめて出て行きます。だから伯母さんはもう、この話に口を出さないで!」


ぴしゃりとそう言うと、伯母さんは驚いたのか口をあんぐりと開けたまま、何も言い返してこなかった。


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