俺様外科医に求婚されました
鳴り響く目覚まし時計の音に、ハッとして目が覚めた。
夢を見ていたのだろうか。
瞬きすると、何故か一筋の涙が目尻からスーッと流れていった。
つけっぱなしになっていたテレビを見つめ、いつの間に眠ってしまってたんだろうと考える。
一体何の夢を見ていたんだろう。
思い出せないけれど、悲しい夢だったような気がする。
指先で涙を拭いソファから体を起こした私は、すぐにカーテンを開けにいき、朝の光を浴びた。
「…よし、今日も頑張らなきゃ」
そして自分に喝を入れるようにそう口にすると、いつものように仕事に向かう準備を始めていった。
諒太と再会したからといって、過去を振り返っててもしょうがない。
過ぎてしまった時間は、元には戻らないのだから。
「お母さん、いってきます」
リビングの一角に置いてある小さな仏壇に向かってそう言うと、私はそこに手を合わせてから家を出た。