俺様外科医に求婚されました



「おはようございます」


病院に着き白衣に着替えた私は、いつも通り業務連絡を確認するとスタッフステーションを出た。

母が亡くなってから半年ほどは何もする気にもなれず、後悔に苛まれるばかりの無気力な日々を過ごしていた。

涙はもう出ないんじゃないかと思うほど、朝も昼も夜も、気を抜いたら泣いてばかりいた。
仕事も休みがちになっていた。


だけど母の死後、半年が過ぎた頃に母が私の夢に出てきて言ったのだ。


「理香子。いつまでそうやってるつもり?いい加減、前を向かなきゃダメでしょ?」


夢の中の母は、病気になる前の母のようで。
しっかり者で、少し口うるさくて、溌剌とした…元気な母だった。


「そんなんじゃ、お母さんは安心できない。しっかりしなさい。お母さんは理香子をそんな弱い子に育てた覚えはないんだから」


そう言われ、私は夢から覚めた。

そして沈みきっていた現実の自分にも、その時初めて目を覚まされたような気がした。


いつまでも、泣いてばかりいちゃいけない。
お母さんはもしかしたら、私がこんなんだから…心配でまだ成仏出来ていないのかもしれない。

そう思ってからは、私は気持ちを切り替え前を向いていった。

そして目標を立て、看護師になるという道を選んでがむしゃらに進んだ。


ただ必死だった。
振り返らないために、走って、走って。

立ち止まらないために、前だけを見て走り続けて。


私は…看護師になった。


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