俺様外科医に求婚されました



動機は不純だったかもしれない。

人の命を救うために役に立ちたいとか。
医療に携わる仕事をして、誰かを救いたいとか。

私はそういう気持ちで看護師になったんじゃない。


…自分のためだった。
辛い過去や後悔から、逃げるためだった。


だけど今は…


「山本さん、点滴交換しますね」

「ありがとう。今日も外は寒そうだね」

「寒いですよー!ビュンビュン風も吹いてましたし、凍っちゃうかと思うくらいとにかく風が冷たかったです」


動機は不純でも、この仕事を選んで良かったと思っている。


「そうか。でも、寒くてもいいからちょっとくらいは外に散歩に行きたいもんだな」

「そうですね。じゃあ先生にお願いしておきます。もう少し暖かくなったら、外出許可をもらえるように」

「本当かい?それは嬉しいな。楽しみにしてるよ」


一瞬でも誰かの喜びや笑顔の瞬間に立ち会えた時。

ほんの些細な会話でも、誰かの希望や救いの手助けができる、この看護師という仕事を…選んで良かったと。

今は、心から思うんだ。


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