俺様外科医に求婚されました
寒そうに肩をすくめた諒太は、周囲をキョロキョロ見渡しながら私のことを探しているようだった。
遠目からでもわかる、なんだか待ち遠しそうな表情。
その顔を見ていると、胸がつぶれそうなくらい苦しくなった。
出来ることならすぐにでも、諒太の元に駆け寄りたかった。
せめて最後なら、ちゃんと言いたかった。
好きでしたって。
いつの間にか、こんなに苦しいくらい好きになってましたって。
もっとちゃんと話しておけばよかった。
ごめんなさいも、さよならも。
自分の口から、ちゃんと諒太に言いたかった…。
でも私には、それが出来なかった。
ただ遠くから諒太の姿を見ているだけで精一杯で。
諒太が携帯を触った直後、私の携帯がカバンの中で震えると、急いでそれを手に取り私は画面を見つめた。
‘‘あと二分だぞー!無遅刻死守、大丈夫か?’’
「……っ…」
そしてその文字を見た瞬間、目の前が急速に滲んでいった。
すぐに諒太の姿に目を向けた。
だけど溢れてくる涙のせいで、その姿はぼんやりとしか見えなくて。
「無遅刻…っ…死守出来な…よ…っ…」
声を押し殺して、泣いた。
私は生まれて初めて、遅刻どころか約束まで破ることになる。
お母さんとの約束も、破ることになる…。