俺様外科医に求婚されました
「森島さん、来週の月曜には退院の方向でいこうか」
「はい、じゃあ事務にも伝えておきます」
「お、よろしく。あ、そうそう、そういえばさ」
勤務時間も終わりに近付いた頃、患者さんの経過報告のため輪島部長とやりとりをしていた時だった。
「諒太がずっと忘れられないとか言ってた相手って、望月さんのことだったんだな」
「えっ?」
「でもびっくりだよ。まさかこんな近くにいたなんて。知ってたらもっと早くにあいつに教えてあげたのに」
輪島部長はそう言うと私を見てニコリと笑う。
「何があったかは詳しく聞いてないけど。色々聞かれたから、キミがいつからここで働いてるかとか勝手に喋っちゃったんだ。悪い」
「…いえ、大丈夫です」
本音を言うと、何で喋ったんだって思うところはあった。だけど多分、輪島部長に悪気はない。
おそらく諒太がしつこく問い質したのだと想像出来たし、その勢いに負けて話してしまったんだろう。
「でもさ、何で諒太をフッたりしたの。あんな条件の良い男、なかなかいないだろ?顔良し性格も良し。天才脳外科医で、おまけに大和国際病院の後継者だろ」
「…そうですね」
「それなのに浮いた話は全くないし、フラれた女が忘れられないとかずっと言ってたからさ。そろそろ俺らも心配で、合コンでも開いて新たな出会いを作ってあげようかって。あの場を設けたんだ」
「…そうだったんですか」
「でも、いくら偶然だとしてもだよ?別れた二人がそういうタイミングで再会するなんて、すごいことだと思わないか?」
そう聞かれ、私は返す言葉に困ってしまった。
それは私だって思ってる。
いくら偶然だとしても、どうしてだったんだろうって。運命を操る神様がいるのなら、聞けるものなら聞いてみたい。
私達を再会させて、どうしたかったのかと。