俺様外科医に求婚されました
私達は泣きながら、顔を見合わせた。
「泣かないでよ……おめでとうは?」
「…んっ…おめで…と」
「ふふっ、だから泣かないでってば」
小野さんは涙を拭いながら、そう言って笑う。
そして、私に言った。
「私、ちゃんと幸せだから。今、すっっごく幸せだから。だから…もう昔のことは忘れて、笑おう。ほら、笑って」
そんなこと言われても、笑えない。
忘れて笑うことなんて…許されるわけない。
「もうっ、手がかかるなぁ」
小野さんはそう言うと、俯いていた私にふっと近付いてきたかと思ったら…
いきなり脇腹をくすぐってきた。
「…ちょっ……やめっ…」
心の中は、複雑な気持ちでいっぱいなのに、体は素直に反応してしまう。
「ほらっ、笑え笑えー」
「…やめ…っ……あははっ…」
そして私は、気付けば五年ぶりに声を上げて笑っていた。