俺様外科医に求婚されました



最初の一週間は、院内の備品の場所を覚えたり設備の使用法を習ったり。

カバーなどのリネン類の交換や、排泄介助の実践研修を受けたりしていた。

だけど、それを過ぎたあたりから、ホスピス病棟というところがどういう場所なのか、私は少しずつ理解し始めていた。

研修会もあったため、尚更だったと思う。


ホスピスは、命を脅かすガンなどの疾患に直面する患者とその家族に対して、痛みだけではなくその他の心理的問題なども早期に発見し、的確な治療、処置を行って、苦しみを予防して和らげることを目的とした緩和ケアの病棟だ。


痛みに顔を歪ませる姿。
泣き疲れて、眠りにつく横顔。
薬はもう嫌だと暴れる…小さな子供。

それらを目にするのは度々で、最初の頃は家に帰ってもなかなか眠ることが出来なかった。


けれど、そんな日々の中でも胸が温まるような出来事もたくさんあった。


布団カバーを交換した後、ありがとうと言ってキャンディをくれた小さな女の子。
今日は良い天気だね、と窓の向こうを指差す男の子。

身体を拭いていると、照れくさそうに「お姉さんは好きな人とかいる?」と聞いてきた14歳の女の子。


みんな、それぞれ痛みと闘っているのに。
たくさんの注射痕や、つけられたままの点滴がずっとずっと辛いはずなのに。


医者でも看護師でもない看護助手の私に、そんな声をかけてくれたり笑顔を見せてくれた時は、それだけで胸がいっぱいになった。


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