俺様外科医に求婚されました
「私服姿もなかなか良いな」
「えっ?」
「いや、こっちの話。じゃあ、行こうか」
行く?行くってどこに?
「えっ、あの…」
「まぁまぁ、詳しい話は後ほどゆっくり」
その人はそう言うと、いきなり私の肩を抱き寄せて病院の玄関口に向かっていく。
「えっ、なっ、何なんですか?私は手紙を」
「そっ。手紙を受け取りに来た。でも、それは俺とメシを食った後だ」
……は…い?
気安く肩を抱いて、一体何様?
見た目はパーフェクトをあげてもいいくらい完璧だし、先生は先生だと思うけど…ホスピス病棟で見ることはないし、どこの科の先生なのかもわからない。
どうする、理香子。
ゴクリと唾を飲み込んで、私は一度深呼吸した。
そして。
「傷心の看護助手につけ込む、医者ならではのクセの悪いナンパですか。さっさと手紙を渡してください」
そう言うと、その人の腕を捻じりながら引き離した。
「いっ……た」
「申し訳ありませんが。手癖、酒癖、女癖。私はそういったクセの悪い人がどうも苦手で」
「クセの悪い?人聞きが悪いなぁ。でもまぁ、手紙を預かったっていうのは俺なりの、なんていうか…よく言えば優しいウソで、悪くいえば…まぁ君を誘い出すためのナンパだな」
「最低ですね」
「泣いてたから」
「はい?」
私はじろっと睨みをきかせながら、その人の顔を見上げた。