俺様外科医に求婚されました



「一カ月、ずっと見守ってたキミが、泣いてたから」


一カ月見守ってた?
この人が私を?何で?


「初っ端からホスピス棟だなんて、すぐ精神的にきて、あっという間に辞めるんだろうなって思ってた」

「…えっ?」

「でも、回診で小児ホスピスに行く度、とにかく一生懸命仕事を覚えようとしてるんだなって感じたし」

「…はぁ」

「基本的な業務以外でも子供達に紙芝居を読んでたり、一緒に絵を描いてたり。戦隊ごっこの悪役はスッゲーはまり役なのか周りを恐がらせたり笑わせてたり」

「はっ、はまり役って…」


いつ、どこで見られていたんだろう。

全く気付かなかった。

この人がホスピス病棟に来ていたことも、今この人から聞かされて初めて知った。



「初めてがあそこなのに、なかなかメンタル強いんだなぁって。思ってた、ついさっきまでは」


その人はそう言うと、私の頭にふわりと手を乗せて。


「でも、さっき偶然キミが優梨奈ちゃんのいた病室に入っていくのを見かけてさ。おまけに泣き声まで聞こえてきたら、ほっとけなかった」


と、至近距離でそんなことを言ってきた。


「えっ……そ、う…なんですか…」


尻すぼみに小さくなった声。
どう言えばいいのかわからなくて、思わず下を向いた。


< 31 / 250 >

この作品をシェア

pagetop