俺様外科医に求婚されました
あの時はまだ、知らなかった。
一緒に焼肉屋に行って、生ビールでひとまず乾杯して。
「初めて会った時に、あ、俺この子と一カ月後に焼肉行くかもって思ってたんだよ、マジで」
そんなことをサラッと言う、いかにも軽そうな人のことを。
「もう一つ言うと、あの時キミの肩を叩いた瞬間、ビビっときたんだよね」
「はい?」
「言うじゃん、運命の人に出会った時とか触れた瞬間にビビっとくるって」
チャラい男が言いそうなセリフを恥ずかしげもなく口にする、その人のことを。
「生憎ですが、私の方は全くビビっとはきてませんし、ビビっときたのは静電気か何かじゃないですか?」
私はまだ、何も知らなかった。
「ったく冷たいなぁ。子供にはスッゲー優しいのに」
そう言ってスネたフリをする彼が。
「俺に冷たくするやつなんて、院内でキミが初めてだ」
偉そうに、そう言って笑った彼が。
まさか、大和国際病院の、跡取り息子だったなんて。
それを知ったのは…
それからもう少し後のことだったーーー。