俺様外科医に求婚されました
「名前は大和 諒太。彼のお父様が、この病院の院長で、お母様は理事長」
小坂主任が、耳元でそっと囁く。
や、大和…諒太って。
いくら名前を知らなかったとはいえ、大変だ。
私はもしかしたら、いや、もしかしなくても。
ものすごい人に、ものすごくとんでもない失言や失態をしていたのでは?
彼の正体を知った瞬間、私はここ一カ月の態度を振り返り、とにかく後悔するしかなかった。
何故なら…焼肉に行ったあの日以降、あの人は何かと小児ホスピスに現れては、仕事中の私に休みはいつだとか、趣味は何だとか、くだらない質問ばかりをしてきたり。
帰りに待ち伏せされて、また食事に行こうと誘われたり。
ついさっきのように、仕事中に仕事の邪魔をしてきたり。
そしてその都度私は…
「プライベートなことは言いません」
「二度と行きません」「私の仕事です」と、そっけない態度で、あの人のことを無視してきた。
手紙の一件もあり、嘘つきな軽い男はキライだったからだ。
でも。あぁ、どうして気付かなかったんだろう。
何で誰も教えてくれなかったの。
っていうかあの先生も!
普通は名前を名乗るでしょう?
名前さえ聞いていたら、私だってそこまでバカじゃない。
大和と聞いて、気付けていたかもしれないのに。