俺様外科医に求婚されました
胸の奥が、ぎゅうっと痛む。
わざとらしい、作り笑顔。
こんなの全然諒太らしくない。うまく笑えていない。
でも、その原因が自分にあることがわかっていたから。
私は、そんな諒太から目をそらす事しか出来なかった。
「何か言えよ」
うつむき黙り込む私に、諒太は続ける。
「昨日、あれからずっと…考えてた。何であんな場に、理香子がいたのか。結婚して日本にはいないはずのお前が、どうして…輪島のいる病院で働いてるのか」
時折間を開けて、言葉を選ぶように話す諒太は私の肩にそっと触れた。
「黙ってないで、何か言ってくれよ」
掠れるような声が耳元で響く。
その瞬間、懐かしい…あのシトラスの匂いが漂った。