俺様外科医に求婚されました



胸の奥が、ぎゅうっと痛む。


わざとらしい、作り笑顔。
こんなの全然諒太らしくない。うまく笑えていない。

でも、その原因が自分にあることがわかっていたから。
私は、そんな諒太から目をそらす事しか出来なかった。


「何か言えよ」


うつむき黙り込む私に、諒太は続ける。


「昨日、あれからずっと…考えてた。何であんな場に、理香子がいたのか。結婚して日本にはいないはずのお前が、どうして…輪島のいる病院で働いてるのか」


時折間を開けて、言葉を選ぶように話す諒太は私の肩にそっと触れた。


「黙ってないで、何か言ってくれよ」


掠れるような声が耳元で響く。

その瞬間、懐かしい…あのシトラスの匂いが漂った。


< 93 / 250 >

この作品をシェア

pagetop