俺様外科医に求婚されました
「何かあったら呼んでくださいね」
私は緒方さんにそう言うと、ベッドから離れて来た時と同じようにカーテンを元に戻した。
「三宅さん、失礼しまーす」
そしてまた、同じ病室内の次の患者の元を回った。
体温や血圧のバイタルチェック。
点滴や採血。
尿道カテーテルの挿入に、傷口の消毒や、包帯の交換。
私は今、あの頃には出来なかった数々の医療行為を行っている。
諒太が知ったら驚くだろうか。
あの頃は看護助手だった私が、今では准看護師になっているなんて。
811号室の仕事を終え病室を後にした私は、スタッフステーションに戻る途中ふと諒太のことを思い出して…
もし知ったなら、一体どんな顔をするんだろう。
何故か、そんなことを思った。
私がこの青葉総合病院で働き始めたのは、もう五年も前のことだ。
その時の職種は、大和国際病院にいた時と同じ、看護助手だった。
そんな私がここで一年働き、その後は働きながら二年間准看護学校に通い、資格を得た二年前からは准看護師としてこの病院で働いている。