隣の君は眠り姫




再会を果たしたのはまだ陽が優しい初夏。



夏服に身を包んだ彼女は席替えによって僕の隣の席になった。


嬉しくて1人小さくガッツポーズをしたことは言うまでもない。



「はじめまして、私は山田小夜。
休みがちになるかもだけどよろしくね。」


控えめで少し高い声に余計に愛しさが溢れた。




「こちらこそ。よろしく。」


素っ気なくそう返すのがいっぱいいっぱいだった。

顔が赤くなっているのを隠したくて窓の外を見たが、後ろからくすくすと笑い声が聞こえ余計に恥ずかしくなった。




「名前、なんて呼ぶの??」



「……佐藤 ○。」

昔から自分の名前が嫌いだった。
女みたいで弱々しい自分の名前が。


「ふはっ……意外だね。」


でも、彼女が吹き出してくれたおかけで、
少しだけ、ほんの少しだけ好きになれたような気がした。




「…意外ってなんだよ。」


「んー??ずいぶんかわいい名前だなぁってw」



「馬鹿にしてんの?」


「まさか!あったかい名前だね。」



初めて自分の名前がこれでよかったと思えた。

大抵馬鹿にされ、喧嘩になるこの名前をこいつはあたたかいと微笑みながら言った。





「お前は名前負けしてるんだな。」

「はぁん?!?!」


素直になれない自分の気持ちに少し戸惑いながら照れたように笑った。
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