隣の君は眠り姫


偶然、というべきか彼は私の隣の席になった。





「はじめまして、私は山田小夜。
休みがちになるかもだけどよろしくね。」



あたかも初めて会ったように言った。
彼は少しだけびっくりしたように目を大きく開けて


「こちらこそ。よろしく。」


と言って窓の外の方へ顔を向けた。

でも、ちらっと見えた耳が真っ赤なのを見て愛しさと共にくすくすという笑い声が零れた。




「名前、なんて呼ぶの??」



「……佐藤 ○。」


少しだけ言い淀んで言った彼に少し笑みが零れて、



「ふはっ…意外だね。」


「…意外ってなんだよ。」


少しむっとして言い返してくる君にやっぱり笑みが零れた。




「んー?ずいぶんかわいい名前だなぁってw」



「馬鹿にしてんの?」



ピクっと彼の口元が引き攣った。



「まさか!あったかい名前だね。」



少し照れたように笑えば、彼は「変なやつ」と小さく呟いて少し安心したように息を吐いた。




「(…好きだなぁ。)」


そう気づいてしまった心はもう止められないものになっていた。





「お前は名前負けしてるんだな。」


「はぁん?!?!」



吐き捨てるように言って彼はそっぽ向いてしまった。


でもその頬がほんのり赤かったことを私は見逃さない。




「よろしくね、佐藤くん!」


「あー……うん」


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