たとえ嫌だと言われても、俺はお前を離さない。
デート? と部長が小さく首を傾げる。


「私、デートも今まであんまりしたくなくて……。色々順番はおかしくなってしまったけど、そういうことから始めて、部長のこともっとたくさん知りたいです」


だから、と言葉を紡いだところで、部長がぽかんとしていることに気が付き、ハッとする。
わ、私変なこと言った⁉︎ どの辺りがおかしかった⁉︎ 全部⁉︎
やっぱり自分の気持ちを相手に伝えるのは苦手ー‼︎


と、軽くパニックに陥っていると。


「ははっ」

初めて見た。部長が声を出して笑うところ。
いつもクールで滅多に表情を崩さない彼なのに、その笑顔は子供みたいに無邪気で何だか可愛い。
彼のこんな顔、きっと職場の誰も知らない。
そう思ったら、それたけで胸がきゅんと疼く。


「そうだな。明日明後日の土日は仕事が立て込んでるから厳しいが、空いてる時にデートしよう」

その言葉が嬉しくて、私も笑顔になる。


「……って。部長、明日も出勤なんですね? じゃあ私帰らないと……」

言いながらソファから立ち上がるけど、腰が痛くてすぐにしゃがみ込んでしまった。


「おい、急に立つな。危ない」

「で、ですが帰らないと……」

「泊まっていけ。そもそも俺は、セックスした時点でそのつもりだ」

「セ……」

慣れてないんだから、もう少しオブラートに包んだ言い方をしてほしい。なんて思ったけど、何でもはっきり言うところは部長らしい。私も見習わなきゃとさえ思う。


「……では、お言葉に甘えて今日は泊まらせてください」

そう言うと、部長は「はい、どうぞ」なんて言い方するから、ちょっとおかしくて笑ってしまった。


「えっと、じゃあ私はどこで寝れば……?」

「当然、俺のベッドだ」

「え? じゃあ部長はどこで寝るんですか?」

「当然、俺のベッドだ」


へ? ってことはつまり……。


「同じベッドで寝るんですか?」

「だから当たり前だろ。何で違う場所で寝るんだ」

「えと、えとっ」

そ、そりゃあここまでしておきながら一緒のベッドで寝るのを恥ずかしがるなんておかしいかもしれない。だけどやっぱ、恥ずかしいし……!
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