たとえ嫌だと言われても、俺はお前を離さない。
教室から聞こえてくる高らかな笑い声達。

ーーそうか、やっぱり私、無視されてたんだ。


でもまさか、何も言い返してこないからっていう理由でストレス解消のターゲットにされていたなんて。


そう思うと何とも言えない思いがこみ上げてきて、視界が涙で滲んだ。


そんな時、後ろから『桃城?』と声を掛けられた。
振り向くと声を掛けてきたのは白川先生だったーーけど、泣き顔を見られたくなくて私は走って逃げ去った。


階段を駆け上がって、屋上の扉の前まで辿り着く。
扉は常に施錠されているから、私は扉の前にしゃがみ込み、涙を流し続けた。


だけど、誰かが階段を上がってくる足音が聞こえてきた。

誰? クラスの子達? と、身体を強張らせていたけれど、現れたのは息を切らす白川先生だった。


『どうしたんだよ、桃城』

心配して追いかけてきてくれたの?

でも私は何も言えず、しゃがんだまま涙を流し、ずっと俯いていた。

せっかく来てくれた先生にも、自分の気持ちを何も言えないなんて。こんなんじゃ、ストレス発散で無視されたって仕方ないよ……。

そう思うのに、先生は溜め息一つ吐かず、『何があったか分からないが、大丈夫大丈夫』と言って、私の頭を撫でてくれた。


途端に安心した。手の温かさ、感触、そして優しい先生の声。
ゆっくりと顔を上げると先生はにっこり微笑みながら隣に座ってくれた。
その笑顔にもほっとした。だからかな、自分の気持ちを話すのが苦手な私が、自分が何で泣いているのか、話すことが出来た。
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