たとえ嫌だと言われても、俺はお前を離さない。
驚く私に、白川先生は明るい笑顔を私に向ける。
「桃城、ほんとに久し振りだなー! まさかこんなところで再会するなんて! 亮と知り合いなのか?」
先生の笑顔。昔と変わらない。可愛い笑顔。
言葉に詰まったままの私の代わりに、部長が答える。
「こいつは俺の職場の部下だ」
「へー! 桃城、銀行員になったんだ?」
「それより、お前らはどういう関係だ? 先生、ってことはもしかして……」
「ああ、桃城は俺の昔の教え子! 会うのは卒業振りだ!」
その言葉に、部長は「そうなんだ。偶然だな」と答えていたけれど、急に黙り込んでしまった私にチラッと視線を向けてきたような気はした。
「二人もこれから飯? 俺も一緒にいいかな? っと、その前にトイレ借りよ」
先生はそう言って、カウンター席の私の隣に荷物を置くとトイレへ向かった。
何となく沈黙が流れる。
様子のおかしい私を見て、部長は察したようで、
「……もしかして、この前言ってた〝忘れられない人〟って……」
と言われる。
私は何も答えられなかった。何も言わないということは肯定なのだと思ったらしい彼は、ただ短く「そうか」と答えた……。
すぐに先生が戻ってきて、椅子に腰掛ける。
私は部長と先生に挟まれる状態となった。
オリーブオイルの香り漂うパン、季節のフルーツとサラダの盛り合わせ、甘味を感じるテリーヌ、鶏肉とじゃがいもの焼き料理など、様々な料理を注文した。
そして、部長と先生はそれぞれワインを頼み、私はオレンジ風味のノンアルコールカクテルにした。
「桃城は酒じゃなくていいのか?」右隣にいる先生からそう尋ねられる。
「は、はい。お酒は苦手で」
「そうなんだ。じゃあ無理しない方がいいな。でも、元教え子の前で酒飲むのって変な感じだな〜」
先生の笑顔と明るさはどこまでもあの頃と変わらない。
こうして話していると、先生に恋していた頃のことを色々と思い出す。
だけど、あの頃みたいにドキドキしたり、ときめいたり、そういうのはない。
確かに先生はあの頃と変わっていなくて、私が恋していた頃の先生のままだけど……
今の私がドキドキするのは部長だけみたい。
あれだけ初恋を引きずっていた私だけど……それはやっぱり、いつの間にか恋ではなくなっていたようだ。
でも勿論、こうして再会出来たことは良かった。あの頃の先生のままでいてくれて良かった。
……ていうか部長、さっきから口数が少ない。
元々ペラペラ話すタイプの人じゃないけど、私と二人で話す時は、口下手な私の代わりに色々話を振ってくれたりするのに。
今はただ、白川先生の話に頷いたりするのみ。
それに何だか、私の方を見ない。すぐ隣にいるのに……。
「桃城、ほんとに久し振りだなー! まさかこんなところで再会するなんて! 亮と知り合いなのか?」
先生の笑顔。昔と変わらない。可愛い笑顔。
言葉に詰まったままの私の代わりに、部長が答える。
「こいつは俺の職場の部下だ」
「へー! 桃城、銀行員になったんだ?」
「それより、お前らはどういう関係だ? 先生、ってことはもしかして……」
「ああ、桃城は俺の昔の教え子! 会うのは卒業振りだ!」
その言葉に、部長は「そうなんだ。偶然だな」と答えていたけれど、急に黙り込んでしまった私にチラッと視線を向けてきたような気はした。
「二人もこれから飯? 俺も一緒にいいかな? っと、その前にトイレ借りよ」
先生はそう言って、カウンター席の私の隣に荷物を置くとトイレへ向かった。
何となく沈黙が流れる。
様子のおかしい私を見て、部長は察したようで、
「……もしかして、この前言ってた〝忘れられない人〟って……」
と言われる。
私は何も答えられなかった。何も言わないということは肯定なのだと思ったらしい彼は、ただ短く「そうか」と答えた……。
すぐに先生が戻ってきて、椅子に腰掛ける。
私は部長と先生に挟まれる状態となった。
オリーブオイルの香り漂うパン、季節のフルーツとサラダの盛り合わせ、甘味を感じるテリーヌ、鶏肉とじゃがいもの焼き料理など、様々な料理を注文した。
そして、部長と先生はそれぞれワインを頼み、私はオレンジ風味のノンアルコールカクテルにした。
「桃城は酒じゃなくていいのか?」右隣にいる先生からそう尋ねられる。
「は、はい。お酒は苦手で」
「そうなんだ。じゃあ無理しない方がいいな。でも、元教え子の前で酒飲むのって変な感じだな〜」
先生の笑顔と明るさはどこまでもあの頃と変わらない。
こうして話していると、先生に恋していた頃のことを色々と思い出す。
だけど、あの頃みたいにドキドキしたり、ときめいたり、そういうのはない。
確かに先生はあの頃と変わっていなくて、私が恋していた頃の先生のままだけど……
今の私がドキドキするのは部長だけみたい。
あれだけ初恋を引きずっていた私だけど……それはやっぱり、いつの間にか恋ではなくなっていたようだ。
でも勿論、こうして再会出来たことは良かった。あの頃の先生のままでいてくれて良かった。
……ていうか部長、さっきから口数が少ない。
元々ペラペラ話すタイプの人じゃないけど、私と二人で話す時は、口下手な私の代わりに色々話を振ってくれたりするのに。
今はただ、白川先生の話に頷いたりするのみ。
それに何だか、私の方を見ない。すぐ隣にいるのに……。