たとえ嫌だと言われても、俺はお前を離さない。
今日は、部長のこともっと知れたらいいなっていう思いもあった。だから、もっと色々話してほしいんだけど……。

この後、時間あるかな? お店を出たらどうするんだろう? どちらかの家に行ったりする? それなら、その時に話せればいいんだけど……。


結局、部長とはあまり話さないまま、食事を終えてお店を出ることになった。

駅までは三人で向かうことになって、だけどそこまでの道のりも部長はあまり話さなかった。先生が気にしていない様子なのを見るに、きっと普段からも、先生が話して部長が頷く、みたいな感じの過ごし方なんだろうけど。


「じゃあ、俺はあっちの路線だから」

先生が、私と部長とは逆方向のホームを指差しながら言う。


「桃城、今日は急に割り込んでごめんね」

「とんでもないです。先生と久し振りに会えて嬉しかったです」

再会した瞬間こそ驚いて固まってしまったけれど、次第にこうして普通に話せるようになって良かった。


「ありがとう。俺も嬉しかったよ。ところで、肝心なことを聞くのを忘れてたんだけど」

何ですか? と私が首を傾げると。


「亮と桃城は付き合ってるの?」

「えっ⁉︎」

さっきまで何も聞いてこなかったから、気にしていないんだと思っていた。

何て答えればいいのか分からなくて口ごもっていると、またしても部長が代わりに答えてくれる。


「付き合ってはいない」

「そうなんだ」

先生は特に気にした様子はないけれど、サッと携帯を取り出し「じゃあ桃城。せっかくだしLINEのID交換しようよ」と言ってくる。


「亮の彼女だったら連絡先の交換はマズいかなって思ったけど、そうじゃないみたいだから、良かったら」

また当時のクラスの子達で集まったりしたいしさ、と先生は付け足した。
そう言われると断る理由はない気がして連絡先を交換したけど……やっぱり、やめた方が良かったのかな? 部長に誤解されたらどうしようって思った。
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