たとえ嫌だと言われても、俺はお前を離さない。
「あの、部長。私はーー」

「俺と関係を持ったこと、後悔しているか?」


私の言葉を遮って、部長はそんなことを聞いてくる。

後悔って、どういうこと?


「俺との関係がなければ、今頃薫とデートの相談でも出来たのに、とか思っているんじゃないか? お前は優しい奴だからな、さすがに俺に告白されて一晩過ごした直後に他の男に惹かれることに抵抗を覚えているだけで、本当は俺じゃなくて薫に送ってもらいたかったんじゃないのか?」

「……」

「俺は強引な性格だという自覚はあるが、さすがに友人から女を奪う気はない。何より、お前自身が薫に惹かれているのなら、俺は諦めーー」

「何ですか、それっ」

今度は私が部長の言葉を遮った。

私にしては大きい声に、部長も思わずといった感じに言葉を詰まらせる。


自分の気持ちを伝えるのは苦手だ。それはきっと、言葉選びが苦手だから。
だけど今は、その言葉を選んでいる余裕さえなかった。
私の気持ち、部長にぶつけたかった。


「確かに、私は過去に白川先生のことが好きでした。再会した先生が昔と変わらない優しい人だったことに喜びを感じたのも事実です。
もし部長と知り合う前に白川先生と再会していたら、その時は先生のことをまた好きになっていたかも……いう可能性も否定は出来ません。

でも、今の私が気になっているのは部長なんです! 私は、何とも思っていない人とキスしたり一晩過ごしたりなんてしませんっ!」
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