たとえ嫌だと言われても、俺はお前を離さない。
「話を戻すけど、俺はただ、同窓会の打ち合わせをしたいと思っているだけだよ。だから、桃城と一緒に食事に行っても構わないだろう?」

明るい笑顔を崩さないまま、先生は部長に尋ねる。

部長は「うーん……」と返答に困っている様子だ。
先生に他意はないとはいえ、私と先生が二人きりになることはやっぱり良く思わないのだろう。
とは言え、先生が私の恩師であることも知っているから、同窓会の打ち合わせという名目である以上、〝駄目〟とは言い切れない……そんな感じだろうか。


すると先生は腕時計を見て。


「ヤバい、そろそろ戻らないと。じゃあ桃城。亮から許可もらったら俺にメッセージ送って! じゃあね!」

先生はひらひらと右手を振りながらATMコーナーを出て行った。

その場には、私と部長だけが残される。


「……行くのか?」

部長が私に聞いてくる。先生との食事に行くのかどうか、ということだよね。


「誤解があったようなので……同窓会の打ち合わせということなら、行こうかなと思っています」


二人で会うとはいえ理由が理由だもの、部長も分かってくれるよね。


……そう思ったんだけど、部長は。



「分かった。……でも、行かないって言ってくれると思ったんだがな」


目を逸らし、再び不機嫌そうな顔でそう言ってくる。


……何それ。そんな顔でそんな言い方しなくたっていいじゃない。
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